アンジェリーナ・ジョリーさんの医学的選択

ハリウッドの女優、アンジェリーナ・ジョリーさんは華やかな活躍と同時に、国連の親善大使をつとめるなど、社会活動家としても知られています。

 

こうした活躍の陰で、乳がんの遺伝子検査を受け、予防のために乳腺除去手術に踏み切ったことを明らかにし、大きな反響を呼びました。

 

ジョリーさんはニューヨークタイムズにその体験を「私の医学的選択」として寄稿しました。

 

遺伝子検査を受けるきっかけは、母親の乳がんでした。母親は10年間の闘病のあと、56歳でなくなっています。

 

ジョリーさんは自分も若くして乳がんになるのではと考え、遺伝子検査を受けました。
結果は陽性で、乳がんになるリスクが87%というものでした。

 

 

この結果を受けて、

 

乳がんのできる部位である乳腺を予防のために除去
乳房の形を保つための再建手術を受けた

 

というものです。

 

ジョリーさんは「乳がんに不安を持つ多くの女性に事実を伝えることが必要と考え、自ら公表した」そうです。

 

ここで一躍、遺伝子検査ということばが注目されました。

 

遺伝性の病気とほかの病気の違いは?

遺伝性の病気とほかの病気の違いについては、多くの誤解があります。

 

「遺伝する病気」というと、「ごく限られた人に見られる特殊な病気」というイメージで捉えられている人もいるようです。

 

しかし、私たちがよく知る身近な病気の中にも遺伝性の病気は数多く存在します。

 

たとえば、乳ガンです。

 

日本人女性の5万人以上が毎年乳ガンと診断されています。
食生活の欧米化などの影響もあると考えられますが、患者数は増え続けており、最近ではピンクリボン運動など、社会の関心も高くなってきました。

 

実は、乳がん全体の約5%は遺伝が原因で起こったものです。
また、血液中のコレステロール値が高くなる脂質異常症もそうです。

 

一般的には食生活や生活習慣の影響が大きいものですが、一部は遺伝要因が原因で起きています。

 

しかし、遺伝性のガンとそれ以外のガンは、ガン細胞の見かけや症状では区別することはできません。

 

脂質異常症も、血液中のコレステロール値が高いという症状は同じなのです。

 

では、多くの乳ガン患者の中から遺伝性乳ガンの人を診断することにはどんな意味があるのでしょうか?

遺伝子を知ることのメリット

病気が遺伝性であることを知るメリットとしては、
まず、検査を受けた患者のその後の治療方法や健康管理に役立つことです。

 

病気の治療においては、正確な診断をつけることが何よりも重要です。

 

似たような症状でも原因が異なる病気は数多く存在し、原因が異なれば有効な治療法が異なることがあります。

 

最近の乳がん手術では、出来るだけ乳房を温存する方法がとられるようになっていますが、遺伝性乳ガンの患者では、乳房温存手術を行うと、残った組織から乳ガンが再発する可能性がほかの患者より高くなります。

 

遺伝性の乳ガンは、乳ガンだけでなく卵巣ガンにかかる可能性も高くなります。

 

遺伝子の情報は血縁者でも一定の確率で共有していますから、ひとりの患者が遺伝性乳ガンと診断されれば、兄弟姉妹や子供も同じ遺伝子変化を持っている可能性があります。

 

血縁者の検査の結果、まだ発病していないうちに乳ガンの遺伝子変化があるとわかった人は、将来乳ガンになる可能性が高いと言えます。

 

若いうちから定期的な検査を受けることで、早期発見・早期治療が可能になります。

 

なお、乳がんは早期発見すれば、生命に危険が及ぼすことはほとんどないガンです。